第11回ヘリテージマネージャー大会 報告

神戸地区 津枝勝見(10期)

大会が終了してから間もなく2か月、たいへん遅くなりまして申し訳ありません。以下、簡単に内容をご報告いたします。

 

大会概要

2013年6月1日(土)、第11回ヘリテージマネージャー大会がKIITOで開催されました。
「この10年のヘリテージマネージャー活動を総括し、将来を展望する」というテーマのもと、これまでにない規模での開催となりました。

参加者は、まち歩き101名、フォーラム284名、交流会142でした。(スタッフ含む)

全国に広がりつつあるヘリテージマネージャー活動を反映し、県内や大阪・京都・岡山・奈良・和歌山・徳島香川などの近県はもとより、愛知・三重・愛媛・高知・島根・石川・茨城・栃木など遠方からもご参加いただきました。
この場をお借りして、ご参加いただきました方々には心より感謝申し上げます。

年に一度のこの大会は、ヘリテージマネージャーの同窓会的な役割だけでなく、一般の方々との接点であり、多くの方々に私達の活動を知っていただく貴重な機会でもあります。今回これに加えて、県外のヘリテージ関係者の方々との交流などの様々な役割・可能性が、まだまだあるということを実感することとなりました。

多くの方に集まっていただいた大会でしたが、広報もふくめて一般の方々への浸透はまだこれからという段階にあり、外へ広がっていく活動は始まったばかりと言えます。もっと社会に広く活動を知っていただくためには、文字通り10年が決算ではなく、端緒についたに過ぎないことも感じられました。

来年は但馬地区での開催が予定されていますが、この輪がますます大きくなっていくことを祈念します。来年も多くの方々のご参加お待ちしております。

プログラム

今大会では、同時進行も含め、以下、盛り沢山のプログラムが行われました。

◆ まち歩き (10:00~

恒例のまち歩きは、旧居留地を会場に設定し、次の3つのコースが設定されました。

A.旧神戸居留地十五番館見学コース 案内人:山崎誠
B.旧居留地近代建築めぐりコース 案内人:中尾嘉孝
C.勝手気ままにまちあるきコース(完全自由散策)

まちあるき出発結果的に、Cコースを選んだ方はおられず、Aコース30名以外はBコースとなりました。
 

 

 

 

 

 

 

◆ 展示・映像 (11:00~17:30

B1 大工の仕事展 江戸 保

B2 澤良雄作品展示

B3 景観まちづくり推進員 養成講座の実践と今後の課題 いきいき下町推進協議会

B4 映像1 未来への遺産~東播磨の文化・風景

B5 映像2 補修・改修事例紹介 ~ひょうごヘリテージ年報10集より

展示ブース

 

 

 

 

 

 

 

KIITOのひみつ

◆ KIITOの”ひみつ”12:00~

会場となったKIITOは、旧神戸生糸検査所(旧館:1927年/新館:1932年竣工 神戸市景観形成重要建築物)の建物を活用して、神戸市が2012年8月に開場した施設であり、今話題のヘリテージ物件のため、施設の来歴と共に、保存活用で使われた手法をご案内しました。

 

 

基調講演2基調講演1◆ 基調講演 (13:30~14:20

ヘリテージマネージャーの全国展開  後藤 治(工学院大学教授)

“兵庫県から始まったヘリテージマネージャー養成の動きは、全国各地に広まりつつある。そうした動向を受け、日本建築士会連合会は、昨年7月に「歴史的建造物の保全活用に係る専門家(ヘリテージマネージャー)養成・活用のためのガイドライン」を定めた。また、全国ヘリテージマネージャーネットワーク協議会が10月に設立された。全国のヘリテージマネージャーに期待される役割と職能について、この機会に改めて考えてみたい。あわせて、ヘリテージマネージャーが活躍できる場を増やすために、どのような方策が必要なのかについても展望してみたい。”

 

 

 

発表1発表5 発表4 発表3 ◆ フォーラム (14:30~17:20
A1
近代港都・神戸の都市形成史と建築
中尾嘉孝
NPO法人 歴史と出会えるまちづくり
船場城西の会 活動報告
 中山栄一郎・
永濱修・伊藤大典・山崎みどり・久保剛

三木市・歴史文化遺産を活かすための
公開作戦会議

清水克俊・山之内誠・不破正仁・水島あかね

A2
まちづくり貢献活動
~人・まち・文化 歴史の絆~
 衣川幸文
NPO法人 町なみ屋なみ研究所
「丹波古民家再生プロジェクト」
 酒井宏一
諏訪山地区に関する活動の取組 萩原正五郎

A3
旧豊岡市庁舎 保存活動の報告とその後
池口善啓
旧ジェームズ邸保存活用の報告 松隈章
出石永楽館修理・活用報告 福岡隆夫

A4
旧安田家住宅の活用を考える
シンポジウムの報告
 藤原義照
あわじ島庄屋調査等 淡路地区の取組
奥井正造
ルネサンス旧小國家プロジェクトの取り組み
浦篤志

A5
兵庫県近代化遺産調査 村上賢治
兵庫県近代和風調査 田中康弘
兵庫県古民家再生促進支援事業 岡本憲幸

A6
ヘリテージマネージャーの活動総論
村上裕道
ひょうごヘリテージ10年史
沢田 伸

 

 

◆ 交流会 (17:30~19:30

交流会

平成24年度 神戸地区活動報告

地区世話人 田村 均

平成24年度の神戸地区は、10期生7名を新たに迎え93名の大所帯となりました。前年度からのものを含め、個々のさまざまな取り組み・活動が質・量ともに充実してきたことは勿論ですが、今年度は二つの大きな流れが動き出しました。

大きな流れ

●NPO法人の立ち上げ

任意の活動ネットワークであるH2Oはヘリテージ関係の業務委託の主体となり得ないため、神戸地区でNPO法人を立ち上げたいとの意見は以前よりあったが、澤氏の蔵書を保管・活用する主体としてその必要性が増したことを契機として、平成24年4月の地区懇談会で発議され、設立に向けて具体的に動き出しました。

以後、幾度の話し合いの中でその在り方や実務手続きの検討がなされ、10月に設立総会の開催、11月に申請、2月の認証を経て、今年3月に登記の運びとなりました。「特定非営利活動法人ひょうごヘリテージ機構H2O神戸」として、役員7名・社員25名で24年度末からのスタートです。

 

●第11回記念大会の神戸開催に向けて

毎年恒例のヘリテージマネージャー大会が各地区を一巡して、この25年度は神戸に還ってきます。

ヘリテージマネージャー制度立ち上げから10年の節目となり、この10年の総括と今後の展望をテーマとした記念大会の位置づけがなされ、それにふさわしい企画が求められました。昨年6月のたつのでの大会以降、毎月の準備委員会での中心議題となり、手探りのフリーディスカッションの中から、従来のパネルディスカッション形式は採らず、会場となるホールに各地区のこれまでのプロジェクト毎にブースを設けて、プロジェクトの担当者よりこれまでの活動と今後について展示や各種プレゼンを行い、出席者は興味のあるブースに集まり、プロジェクトの担当者とインタラクティブなやり取りが出来る場としたいという基本コンセプトで合意しました。

それを実現できる会場はKIITO(旧神戸生糸検査所)が相応しいと思われ、自然な流れで計画が進み出しました。25年6月1日の開催に向けて、準備委員会から大会実行委員会に移行し、地区を挙げての取り組み中です。

 

主な活動

準備委員会→大会実行委員会活動

コンスタントに月一回の会合を持ち、今年度は5月に兵庫区の南エリア、7月に須磨区のタウンウォッチングを催しました。また、NPO法人化や第11回大会の準備打ち合わせの場として活用され、新たな展開がなされました。

〔活動期間〕平成22年4月~現在活動継続中

 

ひょうご近代住宅100選・近代住宅定期点検活動

昨年度に引き続き定期的に活動が継続され、活動打ち合わせや現地確認・ポスティング、現地点検と報告書作成に携わりました。

〔活動期間〕平成21年12月~現在活動継続中

 

T家をキーとした諏訪山地区での活動

文化庁補助事業の諏訪山住宅群(T家)を対象とした調査・活用提案が発展的に引き継がれ、地区の文化的背景の考察に踏み込んだ活動が継続してなされています。

〔活動期間〕平成22年7月~現在活動継続中

 

神戸近代建築データバンク

前年度より実施の、東灘・灘・旧葺合・兵庫の4区内の兵庫県近代化遺産に取り上げられた建物を対象としたヒアリング調査と、今年度後半から新たに市内各区の9件を対象に、11名のメンバーでヒアリング調査活動中です。この活動が所有者による登録文化財申請の動きに結実してきていることは周知の事実です。

〔活動期間〕平成20年7月~現在活動継続中

 

有志メンバーによるその他の活動

  • 澤氏が残した書籍・資料の整理を関係者と協力してお手伝いし、一括保管の方途を模索中。
  • グラシアニ邸焼失を受けて、北野地区住民を巻き込んでの茶話会を何度か開催し大山手論を展開。
  • 神戸市よりS(株)の事務所建物の登録文化財申請の話があり、準備上必要な作業に着手。
  • 北僧尾農村歌舞伎舞台の現地調査を実施し安全性を確認。
  • 旧西尻池公会堂(旧ワシオ外科)の保存・活用に向けての地道な取り組み。
  • 神戸市教委の依頼によるJ邸の実測調査協力。
  • 兵庫県の枠を超えて旧大阪市立博物館の調査及び見学会に協力。

など、多彩な活動が展開されています。