ヘリテージマネージャーとは

阪神・淡路大震災の教訓から、1996年に文化財保護法が改正され文化財の裾野を広げる登録文化財制度が創設されました。兵庫県ではその制度を支える人材が必要と考え、2001年度に教育委員会と建築士会が連携して「兵庫県ヘリテージマネージャー養成講習会」を開講しました。そのとき、ヘリテージマネージャーとは「地域に眠る歴史的文化遺産を発見し、保存し、活用し、まちづくりに活かす能力を持った人材」と定義されました。

その後、ヘリテージマネージャーに求められる能力も、活動を重ねるにつれ明確になってきました。
1 地域に眠る歴史的建造物を発掘し、再評価する能力
2 歴史的建造物の保全・活用提案ができる能力
3 地域固有の文化・風景について常に研鑽し熟知する能力
4 伝統工法の知恵に学ぶ謙虚さと確かな技術力
5 地域に入り、地域の人たちとともに汗を流し、歴史的建造物を地域の財産として地域ぐるみで大切にしていく環境づくりを行っていく貢献力

これらの能力を一人の人間が備えることはほとんど不可能ですが、個人の不足する分野についてはヘリテージマネージャーのネットワークを活用し、チームの「総合力」で社会の信頼を獲得していくことが肝要であることに気づきました。

10年余の活動を踏まえて、ヘリテージマネージャーとは、歴史的建造物の修理技術者という狭い枠を超えて、「地域文化活性化の一翼を担う人材群」であると定義できるのではないかと考えています。

兵庫県では2022年度までに16期の講習会が行われ、約530名が受講しています。第14期講習会からは新たな試みとして、建築士のヘリテージマネージャーに加えて、活用を推進・支援するコーディネーター的な人材養成も同時に行うようになり、以降は誰でも全講義を受講すればヘリテージマネージャーに登録される道が拓かれました。従来の建築士という受講資格はなくなりました。
こうした人材養成の流れは全国に広がり、2022年10月現在、46都道府県で養成講習会が実施されるようになり、5,000名を超えるヘリテージマネージャーが誕生しています。

(初代代表世話人 沢田 伸)

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