登録文化財とは

古き良き建物を残してゆく、新しい支援制度ができました。

私たちのまわりには、残してゆきたい風景がたくさんあります。
身近な建造物であっても、地域に親しまれている建物や、時代の特色をよく表したもの、ふたたび造ることのできないものは、貴重な文化財です。この文化財建造物を守り、地域の試算として活かすための制度〈文化財登録制度〉が平成8年に誕生しました。

※ 文化財登録制度は、ヨーロッパをはじめとする世界各国ですでに定着し、文化財保存に大きな役割を果たしています。

資産として活かし、文化として生かす。「ゆるやかに守る」という発想です

登録有形文化財制度では、建造物の様々な活用を行いやすいことが特徴です。
今まで通りに使うのもよし、事業資産や観光資源にすることもできます。外観が大きく変わる場合や移築の場合などに現状変更の届出が必要となりますが、登録することで規制に強く縛られることはありません。例えば内部を一部改装し、ホールやレストラン、資料館などとして活用することもできます。
事業の展開や地域の活性化のために積極的に活用しながら、文化財として緩やかに守ってゆくという制度です。

※ 厳密な保存のためにある従来の〈文化財指定制度〉に比べて、その考え方も諸規制も、ゆるやかな制度です。

たとえば、煙突や塀も対象です。建築後50年の建造物は、文化財

〈登録制度〉の対象となるのは、建造物。住宅・事務所・社寺などはもちろん、橋・水門・トンネル・煙突など幅広く数多くの文化財を対象としています。
建築後50年を経過した建造物で広く親しまれていたり、そこでしか見られない珍しい形をしているものなどが、その資格を持っています。

登録制度の対象となる建造物の種類

  • 建築物・・・住宅・事務所・工場・社寺・公共建築など
  • 土木構造物・・・橋・トンネル・水門・堤防・ダムなど
  • その他工作物・・・煙突・塀・櫓など

さまざまな優遇措置が、事業資産としての有効活用を支援します。

文化財登録となると、さまざまな優遇措置を受けることが可能となります。資産としての文化財活用を多角的に支援することは、この〈登録制度〉の大きな特徴です。

※文化庁発行『建物を地域と文化に 登録有形文化財建造物制度の御案内』(PDF)より抜粋しました。詳しくは、文化庁ホームページよりご覧ください。

建物を地域と文化に(文化庁)

登録文化財の登録状況


全 国 兵庫県 全国比
登録数 10,882件 636件 5.84%
関係市町村 708市町村 28市町 3.95%

兵庫県各市町の登録文化財数(平成28年末現在。登録後に抹消されたものを除く。)

豊岡市・・100件 神戸市・・85件 姫路市・・58件 朝来市・・53件
尼崎市・・42件 加古川市・・36件 篠山市・・32件 猪名川町・・28件
西宮市・・21件 川西市・・20件 加西市・・20件 三木市・・19件
丹波市・・15件 西脇市・・12件 たつの市・・12件 南あわじ市・・11件
洲本市・・11件 宝塚市・・9件 佐用町・・9件 明石市・・7件
加東市・・7件 高砂市・・7件 福崎町・・5件 新温泉町・・5件
芦屋市・・4件 香美町・・4件 三田市・・3件 多可町・・3件
太子町・・2件 淡路市・・1件 ・・ ・・

 

ヘリテージマネージャーと登録文化財

全国数 兵庫県での登録件数(A) そのうちHMによる登録件数(B) (B)/(A)
2003年 591 21 9 42%
2004年 534 49 29 59%
2005年 633 29 12 41%
2006年 458 48 32 66%
2007年 727 39 36 92%
2008年 674 72 70 97%
2009年 508 62 13 20%
2010年 653 15 4 26%
2011年 581 79 41 51%
2012年 594 22 2 9%
2013年 393 31 19 61%
2014年 453 15 9 60%
2015年 490 36 26 72%
2016年 403 14 9 64%

 

登録文化財の導入と意義

文化財登録制度の導入

我が国の歴史的建造物に関する法による保護は、昭和25年公布・施行された「文化財保護法」によっています。同法は、時代の要請により、幾度かの改正が行われ、昭和50年に行われた法改正では、「伝統的建築物群保存制度(伝健制度)」が導入され、指定による点保護と「伝健制度」による面保護へと進展しました。
先進諸外国と比較したとき、点と面による保護のフレームワークは同様ですが、厳選主義をとっていた我が国の指定制度は、諸外国と大きく異なっていました。
我が国は、強い規制にかわる高額・高率の補助によって保護を行ってきましたが、諸外国では、多種多様・大量なものの保護・保存に主眼を置き、活用と両立を図ることを旨としてきました。
その制度の根幹をなしているのが、登録文化財制度です。

近年、地域において保存・伝承されてきた歴史的建造物・記念物・地域の伝統的な芸能や風俗などの伝統文化に対する関心が高まり、伝統文化を活かした「まちづくり」の進展と期待が高まってきています。
一方、時代の変化により、貴重な文化的遺産が社会的評価を得ることもなく、急速に消滅している状況であり、現行の指定文化財制度に比べて、緩やかな保護措置により、多種多様・大量の文化的資産を活用していくために、指定文化財制度の補完制度として、平成8年の法改正により、登録文化財制度が導入されました。

兵庫県における意義

兵庫県では、平成7年の阪神・淡路大震災により、文化財指定を受けていない、多くの貴重な「生きている文化・文化遺産」としての日常的生活景観も多大な被害を受けました。
日常生活景観は、地域の人々に潤いと地域認識の基底を与えるものであり、その修復・再生はまちづくりに欠かせないものです。
平成10年、兵庫県では「まちづくり条例」を制定し、歴史的風土を具現する、その日常生活景観の修復再生に取り組むことになりました。
我が県では、多種多様・大量の文化的資産の保護に適した登録文化財制度の活用及び生活景観の修復・再生に適した手法の開発を行わねばなりません。

諸外国の事例

アメリカ・イギリス・フランスの事例を見ると、登録件数の多さに目を奪われがちですが、専門的スタッフの配置状況を見過ごすことはできません。
例えば、アメリカでは州政府に歴史保護主事を配置し、イギリスでは、市町村に保存主事を設け、フランスでは、県に専門職員及び審議委員を配置するなど、管理主体が地方に有ることが見て取れます。
また、イングランド地方では、NPO団体であるイングリッシュ・ヘリテージで、登録事務を行っているなど、オーソリティを必ずしも公共団体のみに求めていません。

今後の登録文化財の進展を図る上で、参考になるところです。

登録文化財制度の概要

ヘリテージマネージャー養成講習会の資料より抜粋

1、文化財の種類(建造物)

種類 指定区分等 現状変更 建築建築基準法 設計監理
国宝・重要文化財 国指定
(文化財保護法)
申請 3条適用
(建築基準法適用除外)
選定保存技術の
保存団体
(県・市町の)
公共団体指定
県指定(県条例)
市指定(市条例)
町指定(町条例)
申請 3条適用
建築審査会による同意
→指定建築物
→適用除外
特に指定なし
登録文化財 国登録
(文化財保護法)
届出 (一般建築物扱い)
建築基準法を適用
(国庫補助を受ける場合)
あらかじめ文化庁の承認
を受けた者に技術指導を
申し込まなければならない。
歴史的建造物 (一般用語)
同上

 運営上の体系

 2、文化財登録制度

阪神・淡路大震災を契機に制定

施行:平成8年10月1日(公布:平成8年8月30日)

文化財財をゆるやかに守る制度

未指定文化財(建造物)の登録制度。指定制度を補完するもの。

  1. 従来の指定制度・・・許可制、原則として現状保存
  2. 文化財登録制度・・・届出制、外からみえる部分のみを守る、撤去も可能。

登録制度の対象

登録有形文化財登録基準(平成8年8月30日 文部省告示第152号建築物、土木構造物及びその他の工作物(重要文化財及び文化財保護法第98条第2項に規定する指定を地方公共団体が行っているものを除く。)のうち、原則として、建設後50年を経過し、かつ、次の各号の一に該当するもの

  1. 国土の歴史的景観に寄与しているもの
  2. 造形の規範となっているもの
  3. 再現することが容易でないもの

○建造物

  1. 建築物・・・住宅・事務所・工場・社寺・公共建築など
  2. 土木構造物・・・橋・トンネル・水門・堤防・ダム
  3. その他工作物・・・煙突・塀・櫓など

○「建設後50年を経過」とは、当該建造物が竣工した期日から50年を経過したことをいう。

○「原則として建設後50年を経過」とは、着工から竣工まで長期間を要する複合的施設等でその竣工期日を施設全体の竣工又は利用開始の期日としている場合において、当該施設のうち登録の対象となる建造物については、施設全体の竣工期日以前の期日(当該建造物の竣工期日)から50年の経過をもって50年の経過に代えることをいう。

登録の基準

  1. 国土の歴史的景観に寄与しているもの
    国土を形成する地方独自の歴史的景観を認識する上で特に必要な存在となっているもの。例えば、絵画・写真・映画・文学・歌語等にその存在が引用されているもの、地名の由来となるなど土地の理解と密接な関係を有するもの、特別な愛称等があるものなど、当該地方において広く親しまれているもの。
  2. 造形の規範となっているもの
    現在又は過去の一時点において、建設行為を行うに当たり、規範として認識されるもの。例えば、建造物を構成する各部の比例や意匠が優れているもの、建設に名のある設計者又は施工者等が携わったもの、後に類型化するものの初期の作品であるもの、各時代又は類型に特色的にみられる性格を有しているもの。
  3. 再現することが容易でないもの
    建設後相当の年数(100年を目処とする)を経過したことにより、現在同様のものを建設するには多大な経費が必要なもの又は同様のものを建設することが困難であるもの。例えば、建設する際に採用された技術や技能の水準が高いもの、現在において希少な技術や技能を用しているもの、形態や意匠が特殊又は特異で類例が少ないもの。

 国の登録方針

文化財登録制度の趣旨を踏まえ、登録基準を満たすもので条件の整ったものを順次登録していくが、具体的には大別して以下の2種が登録文化財の候補物件として挙げられる。

  1. 日本建築学会等の学術団体、文化庁、地方公共団体などにおいて調査などが行われ、文化庁において登録候補として把握されているもの。
  2. 上記の調査等が行われていないが、地方公共団体の推薦を得られたもの