三田まち見学記(H2O阪神H29年度第1回見学会)

今年度第1回の見学会として三田の旧九鬼家住宅とその周辺の歴史的建造物を巡る見学会が開催された。7月30日昼過ぎ、JR三田駅にメンバー8名が集まり、屋敷町にある旧九鬼家住宅(県指定文化財)に向かう。

三田は‘80年代から大規模なニュータウン建設が進められ’90年頃には日本一の人口増加率を記録した街である。今回はそのニュータウンではなく旧三田の骨格を形成した本町通りと三輪神社参道を巡り、沿道に遺る旧家を眺め、メンバーがあれこれ独自の解説を披露しつつ目的地に向かう。


旧九鬼家住宅ではNPO法人歴史文化財ネットワークさんだの廣山さん、有本さんに迎えて頂き、館内を詳しい解説とともに案内頂く。普段は見学できない2階の洋間にも特別に上がらせて頂き、一同感謝。この住宅は代々家老職を勤めた九鬼家の当主九鬼隆範が自ら設計し、文明開化の明治9年頃に建てた擬洋風建築。

1階の伝統的民家とベランダが3方に廻る2階の洋風表現が混在しているところが魅力の建築である。丸柱や漆喰で塗り上げた柱頭飾りやアーチに明治の大工の意気込みが感じられる。 ふるさと学習館の冷房の効いた教室で藤原講師の座学を受け、真夏行事の要である休憩と給水を済ませた後、屋敷町に在る前田家住宅に向かう。

現在この住宅を管理されている、ご親戚の前田さんにお願いをしたところ、快く門を開けて頂き、庭から見学させて頂くことができた。
前田家住宅は大正15年建築のスパニッシュスタイルの住宅で国登録文化財。南面テラスに設けられた三連アーチ窓が印象的な住宅である。設計者は「文化学院」創設者の西村伊作、独学の建築家である。生まれ故郷の和歌山新宮市には自邸が西村記念館として保存され、国重要文化財となっている。

屋敷町の高台から下り、往時のメインストリート本町通りに面する三田ほんまち交流館縁に向かう。“縁”は古民家を12年前に改修・再生した民営の施設である。訪問すると所有者の中西さんに迎えて頂き、快く内部を案内して頂いた。明治の初めに建てられた旧家で、もとは秤屋を営んでおられたとのこと。柱、梁の伝統的骨組みを意匠的に活かし、のびやかで趣豊かな空間が創りだされていた。この再生事業は「人間サイズのまちづくり賞(建築部門)」受賞、「県景観形成重要建造物」指定を受けている。

夕方近くなり三田駅近くのお店に向かい冷えた麦酒を味わいつつ有意義で愉しい意見交換会を催し、散会となる。(文責:藤井成計・2017.07.30)