塚口御坊と塚口近代住宅見学会

10月25日に行われた阪神地区の見学会、地区世話人の藤原義照さんからの報告です。

今年度は、尼崎地域に重点を絞って見学会を実施してきました。4月には、新規地区メンバー歓迎会を兼ねたJR塚口駅エリアを皮切りに、7月には、阪神大物駅エリアをまわりました。3回目を迎えた今回は、神戸地区のヘリテージ仲間2名の参加も得て、阪急塚口駅エリアをまわりました。中でも神戸地区の原田さんは小さい頃 この阪急塚口エリアに住んでいたと聞き今更ながら人と地域の繋がりを再認識する様(サマ)であった。

1025-01 さて、阪急塚口駅北出口を東へ400m程行くと、伊丹川という小さな水路に東接したこんもりとした土盛りと階段の上に、二本の神木と小さな祠が見える。その左手前にある説明板がなければ 此処が「塚口城」の東門と土塁の跡とは分からず、「祠が祀られているなァ」としか思わず通り過ぎてしまいそうである。

 

当時、都に近いこの様な処は何時戦場になるか判らず、住民の苦難が偲ばれる様であり、また、その前は三叉路になっており 小さいながらも道標も埋まっており、歴史ファンには興味をそそられそうな処である。

次は此処から少し西へ2番目の見学地「矢野邸」へと歩く、ここは道路に接する敷地いっぱいに長屋門を構え、起り屋根でツシ2階建て虫籠窓を持つ大きな母屋があり、庭塀の奥には枯山水の庭が広がる大きな屋敷である。大正前期の建築と言われ「尼崎市都市美形成建築物」に指定されている。

道路を挟んだ向かいの敷地には当家の家業の菰樽を作る建物が建っている。菰樽作りは今では全国に3軒しか存在していない(当主の話)という珍しい仕事も見られ、思いがけない見学ができた。

1025-02 1025-03 1025-04

1025-05 3番目は最初に見学した「塚口城」の中核であった塚口御坊跡の「正玄寺」へと歩く。本堂外観の拝観はできるが内部の拝観や住職の話は聞けなかったのが残念であった。本堂前の説明板には当時の歴史的経緯が記されてはいるが、一見時代が有りそうに見える当本堂についての記述が何処かにあればもっと良かったと思われた。

1025-06 4番目は最後の見学となる「坂野(ばんの)邸」へ、道路からの見学であるが 1926(大正15)年の建物が良くぞここまで残ったと所有者に敬意を払いたいが、所々に損傷が見られ個人所有の建物の維持管理の難しさを見た思いであった。

これで今日の見学会も終り、食事へと向かう途中、両脇に所々松が植えられた道路を歩く。野山さんの話では旧街道であったとの事である。塚口町の住宅地を散策、塚口3丁目北交叉点に差し掛かり、目を引く洋風住宅が目に入る。住宅地として開発された当時のものか、一見の価値ありと思いシャッターを切った。

1025-07  そして、懇親食事会に向かい、きょうは、お開きとなったのであった。

今年も大活躍!/西宮まちたび博たてものガイド

今年も西宮まちたび博のシーズン到来、H2O阪神のメンバーが建築ガイドを引き受け、西宮市内の名建築を案内しています。今回は、平成26年10月11日に実施された「閑静な文教の街 夙川モダニズム建築探訪」、ガイドを務められた長尾光仁さんからのレポートを紹介します。

台風19号の影響も受けずまずまずの日和中,参加者30名がA・B2班に分かれ、私はB班の担当で10時過ぎに阪急夙川駅をスタート、いきなり小旗を持っての先頭誘導を促され、間髪を入れずにガイドをとの指示には若干戸惑いました。

1011-1夙川カトリック教会では、先ず教会の正門で協会の方から説明が有り、引き続き聖堂→カリオンと見学、A班がカリオンの見学の間、交代を待つ間にゴシックとネオゴシックの年代及び様式の違いについて説明。
カリオンを見学の後、外部に誘導し景観建築物等の指定と登録文化財の登録との選考基準の違いについて説明しながら建物外周を一巡、建物を少し離れて見る事により、より建物の特徴や立地の雰囲気を感じる事が出来る旨を説明し、建物の良さを味わって頂きました。

正門へ戻り、浦太郎邸へ向かおうとしましたが、担当の観光協会の方やA班も見当たらず、置いてきぼりを食らったかなと思いつつ夙川公園へ引率、こほろぎ橋を渡る道順を取り、簡単に夙川公園界隈について説明しながら浦邸へ向かう、小旗を掲げマイクのオン・オフを気にしつつ、隊列の確認や道路横断の誘導をしながらのガイドには一汗。
1011-2浦太郎邸に到着、事前の挨拶は済まされているものと思い、ピロティーにて説明を始めていると、浦太郎氏の三女の方が外出より戻られ、「何をされていらしゃるのか」との問い掛けが有り、又戸惑いつつも見学の経緯を説明申し上げ、図々しくも玄関内の見学をお願いすると快く応じて下さり、浦太郎氏ご夫妻までもが挨拶と案内にいらっしゃり室内を見学させて頂き、一同思いがけない対応に大変感激、ピロティーの噴水まで作動して頂きました。
1011-3山本清記念会館は外観を眺めながらモダニズム建築の概要や母屋・茶室等の特徴、見所を説明し、邸内見学は各自で自由に回って頂きました。やがて浦邸の見学を済ませたA班と合流、参加者のアンケート記入が終わるのを待ち、観光協会の方の閉会の挨拶となり、我々にも挨拶を促され又もや戸惑いながらも簡単な挨拶を以って散会となりました。
参加の皆さんが私の不慣れで下手なガイドにも関わらず終始和やかに行動を共にしていただき、最後は笑顔でお帰りになられた事が何よりの救いでした。

-阪神間近代遺産見学会-

暑気払い、極楽浄土、ユニチカ、舟弁慶

ユニチカ記念館暑さ真っ盛りの7月16日(水)午前10時30分、阪神大物駅に集合、尼崎最古のレンガ造建築、ユニチカ記念館の見学をメインに、その周辺にある古寺、古跡を訪ね、暑気払いに一献傾ける、という企画。ユニチカの記念館が、水曜日のみ見学可能となっているので平日開催、とにかく暑かった。そんな状況下で10人の参加があり、地元の野山さんの先導で見学が始まった。

この地域にこれだけの公園があるのかと驚きながら樹々の日陰を縫って移動する事に。又、尼崎が城下町の遺構である事を偲ばせる道や舟が行き交っていたと想われる運河跡が町割りや道路の形態から想像を駆り立てる。

0702最初、訪れた常念寺、浄土真宗本願寺派の寺で、本堂内部は浄土真宗特有の極楽浄土。当初、蝦江(大阪市福島区海老江)に1500年代に建設されていた寺を、大物へ移転しています。移転当初は、大物町3丁目にありましたが、承応年間(1652~54)に罹災し、現在地(大物町1丁目)に移転されたという。

0703ユニチカ記念館、旧尼崎紡績本社事務所として、1900年(明治33年)竣工のレンガ造2階建、延べ面積571.80㎡の建物である。レンガ塀に囲まれた敷地にゆったりと建てられている。イギリス積みの赤煉瓦壁と白い石材とのコントラスト、連続する端正なアーチ窓、煙突の形状・配置のリズム感、外周の煉瓦塀と瓦・控柱のバランス、内部では重厚な階段手摺柱やマントルピースが印象的。室内には、ユニチカ関係の資料をはじめ、昭和天皇行幸の際の玉座など展示されている。建物は「近代化産業遺産」「兵庫県景観形成重要建造物」に指定されている。

0704大物主神社は、義経とその一行が、西国に逃げる途中に滞在したとされており、「義経弁慶隠家跡」の碑がある。能・歌舞伎「船弁慶」ゆかりの神社である。

そのあと、暑気払い、ニューアルカイックで一献傾けたのであった。

阪神地区ヘリマネ第12期受講者歓迎会開催

4月12日(土)にHM講習会第12期受講者の歓迎会を開催しました。
阪神地区対象者6人の内4名が参加下さり、総勢13名が参加。

JR塚口駅に集合、俵さんの案内で上坂部地区を中心に付近を散策しました。
駅に隣接する森永製菓塚口工場の建物のほとんどは、すでに取り壊され、更地が広がり、跡地の再開発計画が進められている。

上坂部地区には、尼崎市都市美形成建築物に指定されている建物が2件ある。俵さんのはからいにより、廣田栄一邸の庭にいれてもらうことができた。主屋の茅葺き屋根は、現在、その上に銅板が葺かれてますが、明治時代に建てられた建物だそうです。

p04121p04122

そのあと、国指定史跡である近松門左衛門の墓が境内にある廣済寺を訪れ、近松記念館を見学、近松公園から伊佐具神社に立ち寄ったりしながら、歓迎会会場の茅葺き古民家「ひろ田」に向かった。ここは、尼崎市都市美形成建築物に指定されている廣田得治邸を活用した料理屋です。田舎風会席料理を味わいながら歓談、天候にも恵まれ楽しいひと時でした。

 

「西宮まちたび博」&「西宮の指定・登録文化財展」顛末記/藤原義照

「西宮まちたび博」報告

「西宮まちたび博」の解説案内の手伝いをして今年で3回目になる。西宮市観光振興課が観光協会として10月から翌年3月にかけて開催する歴史と文化を訪ねるイベントである。90以上あるプログラムの内次の6プログラムをH2O阪神が担当する事になった。

①夙川のモダニズム建築探訪 夙川カトリック教会と旧山本家住宅を訪ねる(夙川のシンボル的な存在、夙川カトリック教会と当時のゆとりある階層の生活感が随処に感じられる和洋折衷様式の旧山本家住宅を見学するツアー)

夙川教会  山本家住宅

②甲子園リゾートを追う!浜甲子園の歴史を訪ねて(昭和初期、甲子園から浜甲子園一帯が 一大リゾートエリアであった面影を偲び 阪神甲子園駅を出発し、リゾート開発の要となった甲子園球場へ かつてアクセスとして活躍していた路面電車跡を通りながら”海の手”と呼ばれた当時の戸建住宅を見学。動物園や遊園地を備えていた浜甲子園阪神パーク跡(現 甲子園浜自然環境センター辺り)や 鳴尾競馬場跡(武庫川女子大学付属中学校・高等学校内)などを見学するツアー)

ww01  濱甲子園倶楽部

③、④20世紀近代建築の象徴をめぐる 甲子園モダニズム建築探訪(大正時代から昭和にかけて花開いた阪神間モダニズム。その面影を色濃く残す建築物を探訪煉瓦造りのマンボウトンネルを抜け 当時の住宅の様子が伺える松山温山記念会館(旧新田邸)を見学するツアー)

⑤、⑥貸切りバスでめぐる 阪神間モダニズム F.Lライト建築様式の芦屋ヨドコウ迎賓館と武庫川女子大学甲子園会館を訪ねて( 二十世紀最高の建築家の一人と言われる フランク・ロイド・ライトによって設計されたヨドコウ迎賓館(旧山邑邸)は兵庫県芦屋市の緑に囲まれた小高い丘の上に建ち 1974年には国の重要文化財に指定され 1989年からは一般公開されている。この天才ライトの愛弟子に当たる遠藤 新が遺した建築が武庫川女子大学甲子園会館(旧甲子園ホテル)で 阪神間モダニズムが花開いた時代に造られたこれらの建物を見学するツアー)

ww02

まず、希望者を募る事とし 阪神の全員に募集したところ1名の応募があった。ある程度予想していたとはいえ 少し気落ちする。次に打つ手は1本釣りしかない。6プログラムの内3つは経験者がいるので 最低でも3人は確保する必要がある。幸い新規加入者の歓迎会があり その時に11期の2名が承諾してくれた。最後の1人は言い出しっぺが貧乏籤を引く事とする。これで面子は揃った。

誰でも 新しいプログラムを担当する際、不安を抱くと思い、各自資料を持ち寄り意見交換することに、そして後日、実物を下見することで散会する。各担当が日時を決め下見を行い これで準備は一応整った。

ところが、ホテルでランチ付きのプログラムが1件中止となる事態が起きる。関連したとは勘ぐりたくはないが 折りしもホテルの食材メニューの偽装問題が起こった直後であった。一部の番狂わせもあったが 概ね問題無く消化出来たのではないかと思われ担当して頂いた各位に謝意を表したい。

=============================

「西宮の指定・登録文化財展」報告
それは1通のメールからであった。
西宮市教育委員会文化財課から、市内に存在する指定文化財の公開展「西宮の指定・登録文化財-近代の住宅建築-」を企画しているので、H2O阪神に協力してくれないだろうか と言うものである。
一体どのような事業なのか 我々にどんな協力を望んでいるのか、H2O阪神のメンバーから賛同者を募り、8名が集まったところで、まず、企画した西宮市文化財課の当人に会って内容を確認した。各人の担当を決め、何回かの会合を重ね、準備をし、公開に備えたのだった。われわれが関わったのは、次の3項目、

①「西宮の指定・登録文化財-近代の住宅建築-」展は西宮市立郷土資料館で行われた。紹介された建物は、
・旧辰馬喜十郎住宅
・旧山本家住宅
・浦家住宅
・松山大学温山記念会館

で、それらに関連した展示解説と兵庫県ヘリテージマネージャーの概要を説明するギャラリートークが行われた。
w02   w03
②現地見学会(近代の住宅建築を見に行こう)

昭和初期、甲子園から浜甲子園一帯に一大リゾートエリアが計画され それと並行して住宅建築が行われた。山の手に対抗して”海の手”と呼ばれた当時の戸建住宅を見て歩き、それぞれの住宅の特徴を解説説明した。

h03
③ワークショップ(親子で文化財の家を作ってみよう)
国登録有形文化財の模型作りであるが、時間に制限があるため1棟のみを作成し、残りは家に持ち帰り完成させて貰う予定で実施した。

w04